滋賀県立近代美術館・小倉遊亀

平成24年(2012)3月


 3月11日午後2時46分、黙とう。テレビで天皇・皇后両陛
下のお姿を拝見し、お言葉を聞きました。それから、小雨
の中を滋賀県立近代美術館に向かいました。

 滋賀県立近代美術館には私の好きな小倉遊亀の絵が常設
展示されているからです。彼女の絵はのびやかで明るく、
明治28年(1895)生まれなのにモダンなのです。いつも私IMG_1169.JPG
をなにかしら明るくみずみずしくしてくれ、心を開放し再
生してくれます。彼女がえがく女性像や子供像は特に好き
です。

 隣の部屋で「日本の前衛」と銘うって戦後の日本の前衛
美術を展示していました。それら抽象絵画は、平面に立体
図をえがくための遠近法や、光と影の陰影法の技法は使用
していませんでした。旧来の「美」ではなく新しい「美」
を追求しているのでしょう。

 キャンバスを床に広げ、絵具やペンキを直接したたらせ
る、ジャクソン・ポロックの絵を初めて見た時、その絵か
ら発するすさまじいまでのエネルギーに圧倒され、ぼう然
としたことがあります。

 今は昔、雪の日に、モスクワの通りを歩いていて、プー
シキン美術館になにげなく入ると、ルーブル美術館にある
ゴーギャンの、特別展が催されていました。

 ソノ時ノ私ノ驚キ。ゴーギャンノエガイタ、タヒチノ絵
ヲ前ニシテ、私ガドレホド感動シタコトカ。

 当時旧ソ連は息苦しい、やたら警察官と軍人の多い、ど
こから見ているか分からない、暗い風景の国でした。灰色
のモノトーンの、重苦しい社会に感じられました。
 そこに、南太平洋の豊かな色彩と、あざやかな自然や女
性が現れたのです。興奮して、ゴーギャンのえがくタヒチ
の絵を見つめ回りました。
 
 その折、私の横で同じような歩みでゴーギャンを見てい
る赤いスカートの女の子に気がつきました。
 私は高揚した感動をその時、彼女に熱く語りたくなった
ほどです。(モンゴル・ブイヤートカー風でもなく、髪の
黒いグルジア風でもなく、ウクライナかロシア風の女の子
でした。まつ毛も金色の)

 一瞬、彼女に恋をしました。ゴーギャンの絵に恋をした
ように。
 
 今となれば、昔のことなのですが。